ClipboardImage
米IBM社は今年8月7日、人間の脳とそっくりな働きをする「SyNapse(シナプス)」という名のCPUを発表しました。人間の脳を模した新しいCPUは将来、私たちの世界に何をもたらすのでしょうか。


判断回路と記憶回路が別々に動くノイマン型に対して、SyNapseは人間の脳のシナプスのように判断と記憶が一体になっているCPUです。記憶が増えるほど、自ら学習するように認識が改善してゆくというのです。 そのようにふるまうプログラムは過去にもありましたが、ハードウェア自体が認識改善のメカニズムを持っていることが革命的な成果だと云えます。

消費電力が少ないのもSyNapseの特徴です。通常のチップならば常に稼働状態になる監視カメラでも、SyNapseならば映像に変化がなければ処理自体が走りません。美術館の警備員のように、ぼけっとしている(エネルギー消費を抑える)ことができるのも、このCPUのすごいところです。

このCPUを役立つものにするためには、何をどのように学習させるのかということが課題です。五感で収集した情報から判断するやり方を学ばせることができれば、SyNapseは名医のように診断したり、F1ドライバーのように運転したりできるようになるでしょう。記憶している類似の状況から判断するという仕事は、SyNapseには向いているはずです。

しかしながら、SyNapseはプロの造園家のように 「施主にとって特別な石を、施主の気持ちを組んで配置したり思い出の樹木を植えこんだり」して お客さまを感動させたりすることはまだまだできないでしょう。目に見えている映像を抽象的にとらえなおしたり、相手の気持ちになって想像するという仕事は、SyNapseの得た「知覚と判断」というレベルを超えているからです。

人を「はっ」と驚かせて、「これ、いいですね」と言わせたり、心使いが技術の技に反映していい気持ちにさせるなど、こういうのはやはり、最後まで人間の仕事なのでしょうね。