ClipboardImage
2010年に初代iPadが発売されると、その大きな画面と携帯性から、電子書籍の時代の到来を誰もが予感したのではないでしょうか。米アマゾンのKindle(キンドル)や楽天のkobo(コボ)など、様々なサービスの発展もあり市場は広がりを見せましたが、紙の書籍ビジネスの10%を削った程度のシェアにとどまっています。 なぜでしょうか。


電子書籍には分かり易いメリットがいくつかあります。本屋に行く必要がない、本を置く場所を取らない、本を捨てる(売る)必要がない。 時間と場所を節約できるという、忙しい現代人に受け入れられそうなメリットです。 私は、雑誌などは新刊が出ていれば表紙だけ見て買っていましたので、電子書籍がピッタリだと思いました。

しかし、電子書籍で雑誌などを買って読んでみると、残念なことに、かなり読みづらかったのです。私はタブレットやスマートフォンで、毎日大量の文章を読んでいます。それらは全く読みづらくありませんし、大して疲れません。しかし、電子書籍の雑誌はダメでした。ある時、試しに電子書籍で小説を購入してみたところ、予想外に読みやすくて驚き、その時に電子書籍の雑誌が読みにくい理由が分かりました。

文字だけの小説はテキストデータをその都度画像化して表示するので、表示倍率を変更してもその都度表示が更新されて、きれいに表示されます。一方で雑誌の方は、写真と文章が入り混じっており、全体として一枚の画像として扱われています。単なる画像ですから表示倍率を上げると粗が見えてきます。これが読みにくくなる原因でした。



ClipboardImage

小説の場合
ClipboardImage

雑誌の場合


これはひとえに、データの問題です。最新のタブレットなどのデバイスの性能に見合ったデータになっていないということです。ストアのシステムの問題で、高解像度の重い書籍データを配信することができないのかもしれませんし、デバイスの表示アプリが高解像度を扱いきれないのかもしれません。

これらのすべての歯車がかみ合ったとき、はじめて、写真と文章を複雑にレイアウトした雑誌を、きれいな文字で表示できるようになるでしょう。そして、その時こそ、本当の電子書籍時代が来るのかもしれません。 


(冒頭の画像はアマゾンのKindleサイトより)
(小説の画像は「三つの棺」 早川書房 Kindle版)
(雑誌の画像は「BikeJIN/培倶人 2015年1月号 vol.143」 エイ出版社 Kindle版)