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2016年は人工知能の技術者にとっては記念すべき年になったのではないでしょうか。GoogleのAlphaGoが囲碁の世界チャンピオンを倒し、将棋の世界ではプロのカンニング騒ぎまでありました。


将棋のプロの世界では、一人の名人を頂点にピラミッド型に棋士を階級分けしています。名人の下にはA級棋士が10名、その下がB級1組(13名)、B級2組(23名)、C級1組(37名)、C級2組(51名)と続き、一年のリーグ戦を経て成績がよければ上のクラスに、悪ければ下のクラスに移動します。(人数は2016年11月現在)

スマートフォンを使って将棋プログラムを動かしそれを参考にすることで公式戦に勝利したと疑われたのは、ピラミッドの最上部に位置するA級の棋士でした。 将棋のトッププロよりも、将棋ソフトの方が強いというのはプロの棋士の中でも周知の事実で、公式戦に悪用しないような制度が整う前にこんな疑惑が浮上したのでした。

将棋の不正を感じ取った相手棋士は、この指し手は人間のものではない、と思ったそうです。プロ棋士はその膨大な将棋経験から、対局中盤の指し手を2、3の候補に絞って検討するそうですが、その経験から大きく外れた指し手を、二十分離席して戻ってきた相手が指し、それが後に勝負を決定づける好手だった為、おかしい、となったのです。

将棋にも囲碁にも「定跡」と呼ばれる決まりきった指し手の順があります。将棋の場合、特に序盤は定跡形で進む事が大半で、まるで何も考えていないかのように数十手進みます。 しかし、実はそれは本当のベストな手順ではなく、将棋プログラムは定跡手順の途中から見たこともない好手を放つと云います。

これは、人が当たり前の常識だと思っていることにも、無駄や失敗がある程度潜んでいて、AIの瞳にはそれがよく見えるという事なのでしょう。人間がなんとなくやり過ごす過程にも、AIは目を光らせてくれます。それは将来、仕事のミスを減らしてくれたり、医療を進歩させたり、生活を安全で豊かなものにしてくれるでしょう。 AIの発展に期待したいと思います。